パブリック フットパス |
イギリスの郊外のパブに昼飯を食いに行く。
「ごめんなさい、食事は夜しか出してないの。」
しかたなく、歩いて15分の道を空腹を感じつつコテージに戻る。
1度目にこのパブに来た時は、昼前で開いてなかった。
2度目の今回も食事にありつけなかった。
スーパーまでは車で10分以上。
空は曇りに小雨。
気温は10℃をやや超えたくらい。
5月も末だというのに、吐く息が白い。
「これなんだ?」
歩道の片側に、ぽつんと現れた「Public Footpath」という、古ぼけた木の板。
「そういえば、ここに来る最中にも同じ様なのあったね。」
「ここ通ったら、近道できるんじゃない?」
「でもこれ、入っていいのかね?」
「Public だから、いいんだよ、きっと。」
男3人、片田舎でちょっとした冒険心にかられ、Public Footpathに踏み入る。
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「畑だね。麦かな?」
「きっとビール作るんだよ。」
適当な想像。
小雨の天気のわりに、土の道はぬかるみも無く、足取りは軽い。
畑ということは、誰かの私有地な訳だ。
あたりを見回すが、自分達以外誰もいない。
それにしても、広い。
「行き止まりだ。」
「いや、ここを乗り越えて行けるよ。」
木の板を乗り越えた先は、別の畑。
「今度は何かな?」
「これ、ジャガイモだな」
凄い量だ。
イギリスでは、料理にチップスがつき物。
チップスとは、日本で言うフライドポテト。
イギリスに住むのであれば、イモ嫌いは大変かな。
「あれ、道が・・・」
しばらく歩き続けると、道が完全に消えた。
あたりを見回し、取りあえず開けている方向を目指す。
次第に高くなる雑草。
人が通った痕跡のかけらもなし。
「痛!」
ジーパンを貫く、強烈なトゲ。
「きっと日本人でここを通ったのは、ウチらが最初だ。」
・・・意地になり、引き返せない男3人。
鉄の柵を乗り越え進む。
完全に私有地だ。
もはやPublic footpathでも何でもない。
「馬だ。」
木の柵で囲まれた中に、数頭の馬がいる。
一匹は見事な白馬だ。
じっとこちらを見ている。
・・・その横で、おじさんも怪しそうにこちらを見ている。
そろそろ引き返す潮時だろう。
結局、ぐるっと周って元のジャガイモ畑に。
最初に踏み入ったPublic Footpathを通り、元来た歩道に帰り着く。
小1時間の冒険の収穫は、裾が泥だらけになったジーパンと
拾ったジャガイモ一個。 |
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Public
Footpath(パブリック フットパス)
いわゆる、遊歩道のこと。
日本のそれとは異なり、私有地であっても通ることが可能な道。
多くの場合、写真のような木の標識が道しるべのように立っている。
Public Footpathにはちゃんと地図も存在する場合があので
きちんと調べてあるけば、前述の男3人のように迷うことも無いだろう。
イギリスにはこのようなPublic Footpathがいたる所にある。
興味があったら、少し道からそれて、自然を満喫するのもいいかもしれない。
ただし、道に迷わないように!
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今回の地図。
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赤線・・・今回歩いた道
緑線・・・歩く予定だった道
灰色・・・ちゃんとした道 |
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